硝子珠海

明かりのない夜の帰り道。猫とすれ違いました。
ひゃっほい、猫だぜ、撫でちゃるぜ。と立ち止まると、猫も立ち止まりました。
おや、人慣れしてるねお前飼い猫かい？　撫でた身体は痩せこけた骨の感触。鳴く声は嗄れ野良猫の風情。
何か食わせられるモノは無かったかなと思い鞄をあさります。その間にも猫はにゃあにゃあ見上げてきます。…昼に食べ損なったおにぎり。ネギ味噌入り。猫にネギは不味いなと海苔を差し出す。食べない。
具を避けて米部分を差し出す。食べない。
様子が変だな、とケータイのライトで猫を照らしてみました。片眼潰れてました。食べ物食べなかった様子からもしかしたら鼻も駄目ですよ。あぁかわいそうだな、と思いつつ米を置いて去りました。非情。言い訳はしません。飼えません。
でもライトで照らした潰れた方の反対の眼が、びー玉みたいにまん丸で、深いところの海みたいにキレイだったのが、酷く印象に残ったのです。