金木犀酒

秋風に混じる甘い香りに、夏の始まりの約束を思いだす。

小さな橙の花を摘み
甘い硝子の破片と一緒に瓶の中に詰め込んで
静かに注ぐ透明な液体を長い時間をかけて琥珀に染める


まぁ。そんなかったるい小話じゃ済まなかった訳なんだがね……っ。
以下制作日記。

梅酒を作ろうと思ってネットで調べてたらキンモクセイ酒の作り方を見つけたから、秋になったら作ろうと思ってたんだ。
で、程良く香りだしたので早速挑戦。いえーい。

１、キンモクセイは洗うと香りが落ちてしまうので、雨の降った次の日に摘むのが良いでしょう。

…花が咲いて、雨が降った次の日が、僕の休日だとは限らないんだよ。まぁそこはしょうがないよね。取り合えず花を摘みましょう。

ちまちま
ちまちまちまちまちま
ちまちまちまちまちまちまtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtm

……この時点で段々嫌になってきた。そりゃそうだ。キンモクセイの花って無茶苦茶小さいんだ。例えるならば、塩を一つまみずつつまんで瓶を一杯にしてくださいって言われてるようなもんなんです。いくらやっても中々集まらない…っ。しかも木陰に入るから虫が。つか凄い蚊に食われました。遠目に見るといっぱいあるように見える花は実際には案外少量で中々に摘み辛い。あぁぁぁあ、一人でやるもんじゃねぇー。

一時間後。
忍耐が切れる。無理。もう無理だ。これ以上は精神的に耐えられない！　公園の花を摘むことに…。
…公園なんです。外から見えにくい位置で隠れて摘んでました。僕の良心が凄い勢いで文句言ってるんです。摘んだ花をこそこそお家に持ち帰る。

一時間でこんだけ。僕頑張った！


２、細かいゴミや虫、ガクを取り除き花と蕾だけにしましょう

結構雑に毟ったので茎とかもちょっと入ってる。

ちまちま
ちまちまちまちまちま
ちまちまちまちまちまちまtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtmtm

…………………………っっっ！！！！！！
またか！？　っく、なんか今すごい後悔してる自分が居るんだ。そりゃそうだよね。こうなることはよくよく考えてみれば分かったよね。作業全部が驚異的なまでに細かい事なんて。
『痛覚残留』をＢＧＭにして黙々。

一時間後。
もういい！　もう止める！！　大体取れたよ、うん大体。ちょっとガクがちらほら残ってるけど、もういい。ちょい気になるけど。
あー、『痛覚残留』止めよう。……、最初の強姦シーンだけちょっとちゃんと見よう。

…３０分後。
作業再開してる自分が嫌だ！　え、何でやってんの自分！？　ＤＶＤもう一回初めから流したら何か見入っちゃって、手元が空いたから、何か、つい。血が憎い…（神経質なＡ）。
あぁでもうん。ようやく気が済んだ。


３、容器の５～８分目まで花と、お好みで氷砂糖を入れお酒を注ぐ。

はぁ、あとはもう簡単です。ここまでが長かったー。甘くしたいから氷砂糖たくさん入れるよん。

こういう貯蔵酒って、ペットボトルで作っても良いのかね…。何かボトル変質しそうー。はははでもまぁいいや。一番ちょうど良い大きさだったんだもん。花が８分目まではいるし、密閉できるし。口が小さいから色々入れるの大変だけど。

あとは一ヶ月ぐらいしてから漉して、程ほどに熟成させれば出来上がりー。
いや、二度とやらねぇな……。心底疲れた。よっぽど美味しかったらまたやるかも知れないけど、そもそも、酒、あんまり、飲まないんだよ、ね。作った梅酒も飲んでない。じゃあ何故作る！？　キンモクセイが好きなんだよ！！


そんで疲れ果てて夕飯の支度。一日中居間の机に向かってて疲れたって言ってんのに、こういう日に限って餃子作ってる僕。やっぱり一人で。…メニュー考え直すのがめんどくさかったんだよう！